2015年2月24日火曜日

コカ・コーラの新製品牛乳は失敗する

のぶです。

Disruptive Innovationで有名なChristensen教授の今週の授業にて、「何かニュースで面白い記事を見た学生はいますか?」と先生が質問したところ、ある学生が、コカ・コーラの新製品である牛乳の話を持ち出しました。

私は存じ上げていなかったのですが、どうやらコカ・コーラがfairlifeという名前の牛乳を来月から売り出すとのこと。従来の牛乳と比較して、カルシウムは30%、タンパク質は50%多く含まれており、価格は通常の2倍だそうです。

In this Friday, Jan. 23, 2015 photo, Fairlife milk products are on display in an Indianapolis grocery store.

教授はこのニュースを聞くと、「ちょうど(議論に)いい記事だ」と言って笑いだし、生徒に意見を求めます。他の生徒が、「カルシウムとタンパク質が多く含まれているから、アスリートの間に新しい需要を生んで、New Market Innovationとなりうる」と発言すると、途中で遮って、「君の理論は間違っている」と断言。クラスがシーンとなったところで、理論の説明を始めました。

彼曰く、コカ・コーラのこの製品は現在の製品を改善しているにすぎず、既存の企業がすぐに対策を打ってくるとのこと。この新製品が成功する可能性は、「高くて0%」で、コカ・コーラがこのような製品を打ち出すのは信じられないらしいです。

私はまだ彼の理論をしっかり理解し切れていないということもあって、正直このように断言されると驚いてしまいます。特にビジネススクールでは、解はいくつもあるという風に教わることが多く、教授が「これが解だ」と断言することはめったにありません。そういった意味で、この教授のクラスには刺激を受けており、もっとしっかり理論を理解したいと思います。

ちなみにこのクラスでは、今注目されている他のある企業に関しても失敗すると教授が断言しており、それも大変面白いケースなので、また書かせていただきたいと思います。

2015年2月17日火曜日

ハーバードビジネススクールの文化と多様性

のぶです。ボストンはまた大雪です。今週末もまた30センチほど雪が積もっており、電車・バスは全てストップ。こんなに大雪が連続することはめったにないそうです。

さて、先日とある教授と会う機会があり、興味深いお話を聞きました。この教授の専門分野はヒューマン・キャピタルやリーダーシップなどで、ハーバードが特に重要視している分野です。私が今学期Independent Project (IP)という卒論のようなものをやっており、そのテーマが採用についてということで、彼の専門とある程度かぶっているので、まずは卒論にについていくつか質問。

その後でまだ教授が10分ほど時間があるとのことで、ハーバードビジネススクール(HBS)の入学課のプロセスをどう思うかと質問すると、「前よりはずっと良くなった」とのこと。彼曰く、昔はそもそも入るべきでない人が沢山入学していたとのことで、入るべきでない人というのはどういう人かと聞くと、別に能力が足りていないというわけではなく、倫理観にかける人やHBSのミッションに合わない人のことのようです。

また、もう一つの問題点として、近年までHBSの学生に多様性がかけていたことを指摘。昔は金融出身の人をものすごくとっていて、今の学長がそれをみて、「我々の生徒は全く多様ではないじゃないか」と疑問視したとのこと。

最後になぜ多様性が重要なのかを聞くと、グループが多様でないと人間は悪い方向に走るからとのこと。ちょうどその話をしているときに、学長が彼を訪ねて来て、今後のHBSの方向性を話すのだといって個室に向かっていきました。

実際今の学長が2010年に就任してから、HBSの文化が変わったというのは何人からも聞いている話で、多様性もかなり意識をしているのを感じます。特に女性や留学生の数を増やしたり、誰も自分は学校に馴染めなかったと感じることが無いように、diversityなやinclusivityなどを議論する必須のクラスを用意したりと、かなり抜本的な改革を行っています。

改革の一部はメディアや学生などに批判されることもありますが、常に教育の質を向上させて、問題を解決していこうとする姿勢はさすがだと思いました。

2015年2月10日火曜日

面白い授業 Whole Food v.s. Costco

のぶです。今週また雪がひどく、学校は今日・明日と休校になりました。

さて、先週出た授業で、面白かった授業を簡単にご紹介させてください。Retailing (日本語で「小売」でしょうか?)というクラスで、もともとStop & ShopというスーパーマーケットチェーンのCEOをしていた先生が教えているクラス。CostcoとWhole Foodsというスーパーの比較のケースでした。

Costcoは、日本にも展開しているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、会員制で倉庫型卸売・小売を展開。天井の高い空間に品物が束になっておかれており、個人商店を持っている方や、家族でまとめ買いをするような方が主なお客さんです。

Costco
















Whole Foodsは主に都会にお店を設けており、有機の食品や健康にいい品物を中心に販売。Costcoの価格帯は一般的なお店より20%安く、収益のほとんどを年会費で集めているのに対して、Whole Foodsは一般的なお店より20%高く価格を設定。お店の雰囲気にも気を使っています。

 Whole Foods















面白いと思ったのは、全然Value Propositionの違うこの二つの会社ですが、顧客層は実は似通いっているということ。実際、クラスの始めに、「両方のお店で買い物する人はいますか?」と先生が聞くと、クラスの半分(50人)くらいが手を挙げていました。

授業では、まず2つの会社の特徴についてまとめた後、どちらの会社がよりいま優位な立場にあるかということを議論。McKinsey -> Bain Capitalの優秀な(はずの)学生が、「不景気の時は、一般管理費(SG&A)が高いWhole Foodsは、マーケティングコストを減らしたり、人件費を減らす余地があるのに対して、Costcoはほとんどマージンなしで売っているから赤字になりうる。Whole Foodsの方が優位」と発言。

すぐに教授から突っ込みが入り、「一般管理費やマーケティングコストを削って、本当に売り上げを保てるのか?お店の雰囲気に影響はないのか?」、「不景気の時は、安いCostcoにお客さんが行かないか?」など、いろいろ議論が発展していきました。

結局まとめとしては、不景気の時は、すごく安いお店とプレミアムのお店の両方が残るものの、バリューが明確でない中間層が苦しむ。また、Whole Foodsはいままではよかったが、既にある程度マーケットに浸透した現段階で、今後お店の数を増やしても、カニバライゼーションを起こす。それに対して、Costcoはビジネスモデルを海外にもっていきやすいのでまだ拡大可能で優位、という結論で終わりました。

このクラスは他にも面白いケースがいくつもありそうなので、時間を見つけ次第、書いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

2015年1月30日金曜日

ハーバードビジネススクールの日本人数大幅増加?

のぶです。ハーバードビジネススクールが今年から日本人の数を大幅に増やそうとしているという記事です。


学長が実際にインタビューで話していますし、2014年ラウンド1で合格した日本人の数が8人というのは事実なので、本当なのではないかと思います。毎年5-10人の日本人留学生を、20人近くにしたいようです。

今後受験される方にとってはGreat Newsですね!

2015年1月29日木曜日

新学期が始まりました

のぶです。今週から冬学期が始まりました。2年生の私にとっては最後の学期となります。大雪で昨日は授業中止となりましたが、今日また授業が再開しました。

道でスキーをする人まで

ハーバードビジネススクールですが、1年生の授業は全て必須で、すべて同じ90人のセクションの人と受講、2年生は完全な選択制で自分の好きなクラスを受講となります。

今学期私が受講している授業の中で特に期待しているのは、Building and Sustaining Successful Enterprisesという授業。いくつかセクションがあるのですが、私は幸いクレイトン・クリステンセンというこのコースを作った教授のセクションに入ることができました。病気のためMBAの授業を教えるのは今年で最後とのことなので、すごく幸いだったと思っています。

クリステンセン教授ですが、ビジネススクール界の大御所で、イノベーションのジレンマという理論を考えたことで有名。ビジネス界ではなかなか大学の理論が実践に結びつかないと言われたりしますが、彼の理論はAppleのジョブスやAmazonのベゾスにも影響を与えたといわれています。

Clayton Christensen World Economic Forum 2013.jpg
Source: Wikipedia

授業は今日で二回目。体調があまりよくないということで、頭の働きが以前より遅くなったと言っているものの、授業の進め方は他のどの教授よりも抜群に優れていて、生徒のコメントにはシャープな突っ込みがたくさん入ります。また他の授業では「この教授、自分の教えている内容分かっているのかな?」と思うことが少なからずあるのですが、彼の場合自分が考え抜いた理論ということもあって、質問への回答も端的でノートをとりたくなるような発言が多々ありました。

また、特に私が好きなのは、彼が「教える」という姿勢で授業に臨もうとするのではなく、「一緒に生徒と考えよう」としていること。謙遜もあると思いますが、彼曰く生徒から学ぶことが沢山あり、授業の議論が彼の理論に影響を与えるとのこと。一方的に教えるレクチャー形式の授業に慣れていた私にとっては、本当の学びとは何かを教え知らされているように思えて、今学期の彼の授業がすごく楽しみです。

今後も彼の授業、また他に印象に残った授業についてブログで書いていきたいと思います。

2015年1月19日月曜日

ハーバードビジネススクールでの成績

のぶです。相変わらずボストンで冬休みを過ごしています。ビジネススクールはまだ始まっていませんが、大学や他の大学院は始まっており、ハーバード・スクウェア近辺には活気が戻ってきました。

今回は、ハーバードビジネススクールでの成績について書きたいと思います。成績の付け方はごく簡単。それぞれのクラスで、トップ20%ほどの生徒が1、一番下の10%の生徒が3、その他の約70%が2というシステムです。成績の基準は、クラスでの発言50%、試験50%となっています。

成績が上位5%の人は、卒業時にBaker Scholarとして表彰されるのに対して、(あまり知られていないですが)一年生が終わった時に成績3を多くとってしまった生徒は、コミティーにかかられて、場合によっては強制休学となってしまうかなりシビアなシステム。例えば私のセクション93人のうち、2人が現在強制休学していて、何年か仕事をしてから、また2年生に戻ってくるものと思います。

このシステムですが、ずっと前から続いていて、今後も続いていくものと思いますが、私は個人的にはもう少し改善できるのではと思っています。特に停学させられた私のセクションの2人は、(私が見ていた限り)他の学生と同様に優秀で、唯一の共通点は発言が苦手で、クラスでの発言回数が若干少なかったということ。特にそのうちの一人とは親しかったのですが、彼はとてもクリエイティブで頭が切れて、いろいろ知的刺激を受けていました。

また、ハーバードビジネススクールでは、最近数年リーダーシップとは何かということを考え直しているようで、特に他の人の話を「聞く」ということが重要だと、一年生の初めに教授が強調していました。その割には、最終的には成績の大部分が発言数によって決まり、発言回数が少ない人が強制停学というのは、矛盾しているのでは?というのが私の感想です。

今学期、学長と朝ごはん一緒にするというプログラムに申し込んだので、もし機会があれば、この点ぜひ彼の意見を聞いてみたいところです。

2015年1月15日木曜日

ハーバードビジネススクール生が途上国でコンサルティング

こんにちは、みつです。

HBSの授業は全てケースメソッドで行われるというのが有名ですが、実は唯一例外があって、それが課外授業であるFIELDという授業です。この授業は、その名の通り、教室の外(フィールド)に飛び出して、さまざまな体験の中から学習していくものです。

FIELDは3つのシリーズからなっており、
  • FIELD1: グループワークを通したリーダーシップ研修
  • FIELD2: 途上国でのコンサルティング
  • FIELD3: スモールビジネスの立ち上げ

となっています。1年の今の時期がちょうどFIELD2となっていて、今日はFIELD2についてご紹介しようと思います。

FIELD2では、1年生900人の学生がクラスをまたいだ5-6人1チームで世界12ヶ国の途上国に行って、現地企業のコンサルティングを行うものです。対象の国は、中国、ベトナム、カンボジア、マレーシア、インドネシア、インド、トルコ、モロッコ、南ア、ブラジル、アルゼンチン、ペルーなど各大陸にまたがり、生徒たちは自分と縁のある国は選べないことになっています。そんな全く知らない土地で、生徒たちは期間中の約1週間、クライアント企業とのミーティング、現地顧客のへのインタビュー、アイデアの立案、クライアントへのプレゼンテーションをして過ごします。

僕は、まだ行ったことがなく、今後も行く機会の少ないであろうアフリカの国に行きたいと思い、モロッコを選びました。そして、同じようにモロッコを選んだ学生の中から、学校側が指定して、クラス以外のメンバーとチームを組まされます。HBSではだいたいクラスで仲良くなるため、こうしたクラス以外の生徒と仲良くなるのはとても貴重な機会です。メンバーは、アメリカ人3人(マッキンゼーからPE、Google、ベンチャー)、マーケティング企業に務めていたアルメニア系カナダ人、そして、すでに自分の会社を売却してその資金でVCをしていてなぜHBSに来てるかわからないアルバニア人。笑 皆ほぼネイティブで英語には苦労しますが、僕が何かしゃべると「皆ちょっとまって!みつがなんか言ってる!」と耳を傾けてくれます笑

担当する企業とプロジェクトのトピックも学校側から発表されます。企業は現地の企業だったり、現地の市場に入ろうとするグローバル企業だったりしますが、僕らの場合は、世界的なカード会社で、現地でのデビットカードの浸透率が低いため、どのようにより多くの人々に利用してもらうか、というのが課題でした。

生徒たちは、1月4日に現地入りして、5日は初のクライアントミーティングにて顔合わせをします。そこからは、12日の最終プレゼンまでどう過ごすかは各チームに委ねられます。僕らのチームはクライアントミーティングが終わった直後から、さまざまな場所でカスタマーインタビューを行っていきました。モダンなショッピングセンターから、道ばたの電器店、路地裏の薄暗いカフェまで。各チームには、通訳兼ガイドのような方がついてくれるのですが、彼がいないとちょっとこわくてなかなか旅行者では行けないようなところまで踏み込んで、本当の現地の人々がどのような生活をしていて、どのような消費者行動をしているのか徹底的に調べます。

その中から、顧客のセグメンテーションや各セグメントのニーズ、現金/カードに対する不満など様々な情報を集めていきます。これらの情報を元にチームで議論を重ね、今のクライアントの状況に照らし合わせて、最適なプランを練っていきます。

余談ですが、ある程度カスタマーインタビューを行ってきたところで、ある程度パターンが見えてきて、「あぁ、市場にはこういう人たちがいて、それぞれこう思ってるんだ!」みたいな感覚が出てくるのですが、この感覚をクライアントにもぜひ経験してもらい、実際の顧客を知ってもらおうと、一緒にカスタマーインタビューに連れ出したこともありました。本人は日頃のデータからは見えてこない生の声に驚いて、たいへん喜んでいました。

また、週の半ばには、クライアントたちを一堂に集めて、クライアントウェルカムディナーを行いました。ディナー後、クライアントのヘッドが自分の車で僕らをカサブランカの街を案内してくれて、おまけに素敵なバーでカクテルまでご馳走になり、逆にすっかりウェルカムされてしまいました。お酒の席では、昼間のビジネスの話もなく、フランスで教育を受けた彼は終始僕らの一人ひとりに「パートナーとどこで知り合ったか、どうやって口説いたか」について聞き出していました。笑

発表前の週末は、HBS内で発表会を行い、お互いにフィールドバックをして、翌日の最終プレゼンに向け、さらに質を高めていきます。僕らのチームは、「カスタマーインタビューの結果と最終提案の結びつきが弱い」という手厳しいフィールドバックをもらいました。これらの受け、さらに資料の手直しをして、翌日のプレゼンに臨みました。

プレゼンは、随時質問を受けながら終始和やかに進み、カスタマーインタビューからの洞察とそれを受けた対策プランに大変満足してもらうことができました。クライアントとは昼食をした後に別れ、ホテルで学校に対するレポートを提出し、プログラムが終わりました。

FIELD2では、知らないメンバーに知らないクライアント、知らないビジネス領域、知らない地域と何もかもわからない状態でスタートするという、コンサルティングをやる上では絶対に避けるべき状況に無理やり入れられ、その中でなんとか価値を生み出していくという貴重な経験を得ることができました。ここで得られた学びはまた別途書きたいと思います。

最後にまた余談ですが、FILED2では皆それぞれに旅程を組んでいて、プログラムの前にスペインで年越しをしたり、プログラム後に旅行をしたりしています。そんな僕もプログラム後1週間はモロッコに残って旅行をする予定です。明日から2泊3日で砂漠ツアーに行ってきます!ではまた!

チームとカスタマーインタビューをしたスーパーにて